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第290回 新しい日本を見せよう

3月27日、新しく監督に就任したハリルホジッチ氏率いる日本代表チームのチュニジアとの国際親善試合・KIRIN CHALLENGE CUP 2015が大分の4万人収容の大分銀行ドームで行われた。4日後の31日には東京・味の素スタジアムでウズベキスタンと対戦するが、この2連戦は単に監督のお手並み拝見というものではなく、6月に始まる2018年ロシアで開催されるFIFA W杯アジア2次予選の戦力の分析、チームの方向性を占う、大切な親善試合と位置づけられたものだった。実際、新しい指揮官はこの2試合を『W杯出場に向けて最高の試合にしたい、絶対に勝たなければならない』との強い意欲を示したとある。会場に入るとピッチを取り囲むボードに「新しい日本をみせよう」のキャッチコピーが目に入った。思いがけないブラジルW杯での予選リーグ敗退、後任監督選びの紆余曲折をへて、心機一転の再起を目指す日本のサッカー界も新たな指揮官を支える、心意気を示す言葉と読み取れた。

対戦したチュニジアは3月18日正午(現地時間)、首都チュニスにあるバルドー博物館でイスラム過激派が外国人観光客を襲撃したテロがあり。犠牲者は21名、そのうち日本人3名が死亡、3人が負傷した痛ましい事件が発生したばかりの国で記憶に新しい。もう少し辿れば2010(平成22)年12月に体制に対する民主化運動、ジャスミン革命(アラブの春)が起こり、それを契機に近隣国のエジプト、リビア、シリア、イエメン、ヨルダン等が革命の波により旧体制が崩壊か大きく揺らいだ。27日、ゲーム前のケータリングルームでのセレモニーでJFA大仁邦彌会長、チュニジアの団長共に挨拶の冒頭で、発生したテロ事件に言及、犠牲者への追悼の意を示した。さらに団長は『日本は世界でも比類なき発展を遂げた国で、経済はもとよりスポーツでも我々は学ぶことの多い国』とコメントした。

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(27日セレモニーにて 左:JFA大仁邦彌会長、右:筆者)

勝つことを絶えず求められ、尚且つ新戦力の育成も同様に求められる、代表監督。大切な緒戦スタートにGK権田修一、DF槇野智章、藤春廣輝、MF山口蛍、FW永井謙佑、川又堅碁等に託する大胆な選手起用。白髪、長身痩躯の監督は殆ど立ちっ放しで戦況を見守る。時折、左への展開が少ないことや、視野が狭い等をジェスチャーで示したり、大きな声で指示をするが、言葉の壁で通じたとは思えない。耐えに耐えて0対0で前半を終了。そして後半6分過ぎから満を持す感じでFW本田圭祐、MF香川真司を投入、さらに1分後にはFW岡崎慎司、宇佐美貴史を起用して一気に勝利のパターンに突入した。33分、香川のパスを受けた本田がゴール左に進み、そこからのクロスに岡崎がヘディングで合わせて先取点。その瞬間の監督は両手を広げ突き上げて歓喜のポーズ。38分にも香川のパスから相手を崩し、シュートのリバウンドを本田が落ち着いて決めて2点目、終わってみればやはり、本田であり岡崎、それに絡む香川での得点だったが、前半を任された若いメンバーの体験は今後に生かされるだろうし、期待のFW武藤嘉紀も相手をかわしたあとに素晴らしい脚力で抜き去り、カウンターにつなぐ持ち味も発揮して存在感を示した。このゲーム観戦、斯界(しかい~この分野の権威)のK、F、Mの論客三氏が近くに居て、監督の采配や選手のあれこれの解説を受け助かった。

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4万人収容のこの大分銀行ドームのスタジアム、2002年のW杯では3ゲームが行われ、その他の国際ゲームも今回を含めて6回の日本代表戦で4勝2分けの好成績。さすがに素晴らしい施設であることを実感した。2019年のラグビーW杯の開催も決定しており、同じく開催地となった熊本のスタジアムが3万2千のキャパで8000席ほどの架設が求められているのに比して万全の感じ。W杯開催から13年、当時の平松守彦・前大分県知事の言葉に『どんじりのランナーは時代の流れが変わればトップになれる』がある、構想から建設に至る道のりには大変なご苦労があったであろうが、この施設は今、まちがいなく九州のトップを走っている。

31日、ウズベキスタン戦の味の素スタジアムは4万6千人。とにかく若手が躍動した陰にハリル監督の大胆な選手起用と采配が光った。4日前の快勝の勢いをそのまま追い風として、FIFAランク72位の格下とはいえ今後の日本代表の道筋に光明を得た戦いだった。

願わくば、日程の都合もあるだろうが、海外組を含めて徹底的な2戦の分析、出来得ればミニキャンプを張って監督の意図するものをメンバー全員で共有してもらいた。さらに、今回の国際親善試合のために海外組の動向を検索していて"海外の9名同時帰国"とあった。同じ便ではなく、同時刻であれば問題ないが、仮に同じ便だったら日本協会の危機管理が問われる。少なくとも各選手の動向を把握して分散帰国を管理する必要を感じる。

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