第276回 長崎国体~2014
隣県、長崎の「がんばらんば国体」。今年の熊本のサッカー競技は女子のみの参加、10月18日の東京都との対戦は爽やかな秋晴れの下、島原市営の人工芝のグラウンドで行われた。平成2年に大爆発をした雲仙普賢岳。火砕流と土石流に襲われた島原市で43人の尊い命が失われ、家屋もそして営々と耕された田畑も道路も飲み込まれ、有明海に押し流した自然の猛威から24年が経過、その普賢岳を間近に仰ぎ見る会場は、多くの関係者の努力で全国からのアスリートを迎え、平和の象徴的な国体の熱気に包まれていた。
対戦相手の東京は「なでしこチャレンジリーグ」のスフィーダ世田谷FCに早稲田、日体大、関東学園大あたりの大学生が加入したチーム。一方の熊本は九州女子リーグに所属する「益城ルネサンス熊本FC」に中高生が加入したチーム、構成するそれぞれの選手のキャリア等からは、いわば格上のチームとの対戦だった。ただ、私は手を使う他の球技では実力差がわりとすんなりと出やすいが、ボールを足で操るサッカーという競技の特質からは、このくらいの力の差は拮抗(きっこう~相対抗して力の差がないこと)していると思っていた。
ゲーム開始時点でまず感じたのは、熊本に緊張感からくる固さが見られなかった(ゲーム直前のアップ、高橋コーチの指示でインナーマッスル・深層筋強化のメニューを課した。タイミング的にどうなのかと思ったが、リラックスしてゲームに入れる効果を感じた)。ただ東京の中盤の守りは流石に球際が強く、熊本は容易にゴール前まで攻め込めない。それでもハードワーク(最初から最後まで走り切る)で東京の攻撃の芽を摘む、そんな展開の中でGKの牛嶋捺希選手の堅い守りが、チームの安定感を支え、次第に相手ゴールを脅かす攻撃が出始めた。双方に決定的な場面が一度ならずあるがゴールには至らず延長戦へ。その間相手のカウンター(速攻)で防御陣が破られ大きなピンチの場面があったが、GK牛嶋がタイミングよく飛び出してクリアするビッグプレーで事なきを得た。私はこの時拍手をしながら"ドイツのノイアー(ブラジルW杯で優勝したドイツのGKマヌエル・ノイアーが再三飛び出してピンチを救い、ドイツを優勝に導いた)並みだ"と声を出したが、周りは無反応。でもこの評価をそっくり牛嶋選手とGKコーチの吉岡氏に届けたい。もつれたゲームは結局PK戦となり、残念ながら勝利は出来なかったが、数少ない練習と仕事や学校と様々に困難な環境を物ともせず、峯知美主将を中心にここまでまとまりチーム力をアップさせたメンバーに拍手を贈りたい。
私が驚くのは県協会の諸氏が夜の練習会に度々訪れ、ボールを拾ったり選手に声を掛けて励ましてくれること。そして、熊本~島原のフェリーが至便だったこともあり、大会当日は遠山和美、藤野健一の元副会長をはじめ、4名の現副会長諸氏、さらに常務理事諸氏、そして多くの保護者の皆さんにも応援をいただいた。その中のお一人、中山重臣副会長も女子チームの練習を殆ど皆勤でみておられ、その雰囲気を伺うと☆スタッフ陣のチームワーク☆選手個々の向上心の高さ、意欲の高さ☆選手個々が素直で謙虚☆最後の練習会で全員が戦術等の確認を行い、充実感を持って纏まった。と大会の前にチームの仕上がりに確かな手応えを語り、対東京戦の内容から今後に大いに期待できるチームとの評価をいただいた。また、協会のサポートとして最大のものは河野忍強化委員長の存在。国体の九州予選に臨んだ成年男子、少年男子を含めて率先して強化に邁進した働きに感謝したい。
今年から、女子の熊本勢の指導をお願いした小野龍男監督、永年県協会の技術委員長のポストにあり、培った卓越した指導力の大ベテラン。国体に向けた熊本での夜の練習会(選手のそれぞれが仕事を終えて集まる)でも、島原の大事な試合前においても、悠々迫らぬ態度で、若いスタッフを信じ、選手を鼓舞する大局観の備わったチーム掌握力は流石だった。コーチの高橋誉氏、コーチ主務の緒方美恵氏、コーチの關和久氏、GKコーチ吉岡慎輔氏、トレーナーの平尾浩志氏の各位と、もちろん選手諸君が一丸となって『チーム小野』を支えていただいたことが東京との互角のゲーム展開につながった訳で、協会を代表してお礼を述べたい。
その前日の17日の夜、島原の老舗ホテル南風楼で日本サッカー協会の名誉総裁高円宮妃久子殿下ご臨席のもと、長崎県サッカー協会主催の歓迎会が行われた。日本サッカー協会の大仁邦彌会長をはじめ挨拶を述べられた各位が高円宮家の次女典子さまのご結婚を寿がれ、久子殿下も満面の笑みでお応えになり、会場は華やかな雰囲気に包まれた。