第281回 芸術の秋
今秋も知人、友人たちの作品展や音楽の会に出かけた。大先輩も居られるし、同世代、そして若い人とそれぞれがカメラを携え、絵筆を持ち、また楽器を操りそして唄う姿を思い浮かべると、私自身が全く不得手な分野なので羨ましく思う。案内を受けたら出来るだけ会場に足を運ぶが、それも会議や会合の間を利用するので時間的な負担は感じない。それでもどうしても都合がつかない場合もある。各人が過ごしてきた人生に加えての高尚な趣味の世界。その姿勢に羨望の思いを駆られながら、会場で観て聴いて楽しむ。
9月17日~22日、アートスペース大宝堂。緒方信行写真展「旅・彩々」。今回はベルギーを中心の欧州だったが、インドや旧ユーゴスラビアやイタリアあたりの作品が多く、写真集の「美しき日本の色彩」「美しき世界の色彩」は私にとっては珠玉の2冊。師事する人たちも多い。今回はベルギーでの写真「静寂」をお借りした。並木の落ち葉の奥の霧、彼の地の秋から春までの永い霧深い季節の到来を告げているようだ。
9月23日~28日、県立美術館別館の城塚幸雄氏の第80回東光展作品は江津湖周辺の「散歩路」。昨年東京都美術館で開催された第79回出品の「阿蘇千年の草原」は入選。昨年のこのブログで作品の写真を掲載したのでご記憶の方も多いと思う。城塚氏はサッカー界の大先輩、まさに文武両道を実践されている。
9月30日~10月5日 、田中寛氏(高校の同級)の県立美術館分館での「フォト千葉城写真展」。彼も緒方信行氏に同行したインドの作品に光るものがある。今回の南仏プロヴァンスの「世界の子ども」は楽しかった。
10月21日~26日、県立美術館分館での遠藤千代子さん(中学の同級)・加藤由喜子さんの「絵と写真の姉妹展」。会場に折よく遠藤さんが居られて、作品の説明を受けた。写真は早朝や日暮れ時にシャッターチャンスが多いのでその分大変との話も聞けた。その早朝だろうが霜と黄色の紅葉の作品「霜模様」を紹介したい。澄みきった寒気が伝わる。なお熊本日日新聞に11月から来年1月末まで毎週月曜日、頁の中ほどの文芸欄に周辺の記事とは関係ないが遠藤さんのモノクロ写真が掲載されている。ぜひお目通しいただきたい。
10月26日~11月3日、熊本信用金庫・本店別館ギャラリーではJOS・OB(元長崎無線電話局のコールサイン)の作品展。川上明生さんとはスポーツを通した知己。今春別件で江津湖近くのご自宅を訊ねた際、湖畔の満開の桜をご案内いただいた。幅広い作品に最近は「お笑い川柳」が加わり、世相を風刺、笑いを誘う。異業種メンバーで参加しているのが西村功さん(彼と私はオムロンの同僚)、一昨年大怪我をしたが復帰、船場近くの熊本城や坪井川の風景をパソコンで刻銘に描いている。作品を見ていてパソコンにしろスマホにしろ、機能の何%を使いこなしているのか考えさせられた。JOS・OBの皆さんの旺盛な制作意欲に敬服。
11月1日~10日、画廊喫茶 南風堂での御村春子・中西信雄の二人展。中西さんは同窓の後輩、黒髪小学校の恩師の御村先生に勧められて絵を描き始めて日が浅いのだそうだが、その日の浅さを感じさせない出来映え。やはり素質なのだろうか、小学校の担任の先生と生徒のユニークなコンビ、これからの楽しみを予感させる。南風堂は中央区の妙体寺町。帰りに子飼商店街で鯖寿司を買い求めたがとても美味しかった。これは全くの余談。
12月5日、県立劇場で平成音楽大の定期演奏会「華麗なる音楽の祭典」。毎年この季節に出田敬三学長より招待をいただいている(学長と私はテレビ熊本の番組審議委員会のメンバー)。1部の協奏曲のファゴットは普段あまり目にしない楽器だが、独特の音色から醸されるメロディーは素晴らしかった。ファイブ・タンゴ・センセーションズより"不安""恐怖"はその題名通り初めて耳にするもので変わった曲だった。2部の独唱・合唱・オーケストラは耳に馴染んだ曲が多く、気軽に楽しめる。特に「~我がふるさと「くまもと」を歌う~」はさらに身近。プロローグの「熊本県民のうた」は作曲が出田学長の父上の出田憲二氏。昭和35年の熊本国体に合わせて作曲されたもので、私は大学4年在学中に国体に参加したが、それ以降折にふれ慣れ親しんだ曲。フィナーレはエルガー没後80年を記念して、エルガー作の「威風堂々」。大きな拍手で終わると、会場の拍手は鳴りやまず、アンコール。すると学長の指揮で「もろびとこぞりて」で一気にクリスマスモード。さらなるアンコールは「雪やコンコン」で、もうお正月モードで大いに盛り上がった。
私ごと、7月に熊本日日新聞の「熊日賞」を頂いた。それに対して重松三和子先生(中学の同窓)から、昨年のブログで紹介した表装の会"花桐グループ"の会に出展された、"僕 若冲の虎です"の掛け軸をいただいた。「寅年生まれで、伊藤若冲ファン」の私としては大感謝でした。