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第265回 W杯所感~2

6月25日の日本対コロンビア戦について、24日の読売新聞に「日本の勝負手」の題でロアッソ熊本の小野剛監督が"「良い守備」からの攻撃を"の見出しでコメントがあった。同氏は日本サッカー協会元技術委員長の肩書であり、予選のグループリーグC組で苦戦する、日本チームの戦い方と今後に向けた提言があった。要約して紹介してみたい。

『自戒を込めて言えば、サッカーを攻撃と守備の二元論で捉えるのは時代遅れだ。両者は表裏一体で、守備を最大限に機能させて切れ目なく攻撃につなげているチームが、今大会では勢いを示している。チリやオランダ、フランスもコロンビアもその一つで、私は組み合わせ抽選前から優勝候補の一つに挙げていた。ハードワークをしてボールを奪い、一気に攻めに入ってくる。隙のないチームでやりづらい。ただ、その勢いに出てくる守備にこそ、日本が攻略する糸口はある』。日本の勝機の可能性としては『相手を遮断する良い守備をすることが前提だ。2点を取りたい状況ではあるが、あえて良い守備から入り、いかに「攻撃的な守備」の形に持っていけるかが得点への道。日本も良いゲームをしている時期は良い守備が出来ていた。「攻撃か守備か」という二元論から脱却しなければ、世界からは遠ざかるばかりだし、今こそ原点に戻ることが大事だろう』。小野監督の言は、まさに列強に立ち向かう日本の戦略論であり、予選リーグ敗退の現実の今、これからの日本の進み方への示唆と受け止めたい。

ここからは、ど素人の私のまさにやぶ睨みの所感を述べてみたい。W杯を通じて日本の選手たちのコメントは『自分たちの(あるいは自分)のサッカーが出来なかった』と異口同音。私はゴルフや陸上の個人競技の例えば、ハンマー投げや棒高跳び等は、自分の出来の云々を口にしても肯けるが、相手と戦う武道でもマラソンでも、特に団体の球技の場合は自分たちの力が出なかったのではなく『出させて貰えなかった』が正しいと思う。球技の指導者だった頃、ゲームに臨む際に留意したのは、当然のことながら相手チームとの過去の対戦データの検証。現在の双方の戦力分析。新戦力のチェック、相手指導者の戦略的傾向掌握等をベースに、一番重要視したのは"いかに、相手のリズムを壊すか。つまり、相手のペースにさせないゲーム展開に持ち込むかを選手たちに伝えた"。

予選リーグの日本チームはゲームの後半に精彩を欠いた。体力の消耗が激しかった。理由は幾つかあるだろうが私はオーバーワークからくる"蓄積された疲労"ではないかと思う。外国でプレーする選手が多い今日、日本での国際マッチに出場するために、自分が所属するチームのゲームに出場して、すぐに帰国、国際マッチが終わればすぐに出国はザラにある。サッカーはそれが常識と言われるが、ブラジルを含めた中南米と欧州の距離、移動時間に比べて極東の日本は遠い。良質の休養、リフレッシュは出来ているのか、意気込み掛け声だけではないだろう。最近よく体幹という言葉が使われるが、その前に体格、体力の差はないのか。2006年ドイツW杯からの帰国の際、当時のジーコ監督のコメントが『体格、体力で負けた』だったが、私はこの言葉は監督として口にしてはいけないコメントと捉えた。それは、ジーコ監督はそれ以前に日本のJリーグでプレーをしていて、日本人が体力、体格で劣るのは熟知していたはず。その代表を引き受けるとき、どうすればそのウイークポイントが解消できるのか、戦術、戦略が大テーマであったはず。それを前述の『体格、体力で負けた』発言はない。ただ、その部分は偽らざる本音でもあったと思う。選手たちの"蓄積された疲労"の懸念は、実は表裏一体ではないかと思う。疲労すれば集中力が欠ける、ボールの奪い合いのサッカーのイロハの部分で競り負ける場面を幾度となく目にしたし、今大会の外国勢に多いロングシュートのこぼれ球を押し込む得点の、前段の強いロングシュートを蹴込むパワー、そんなパワフルな選手も欲しいものだ。

もう一つ苦言を呈したい。W杯全体に見られるボディペインティングの選手。私の、いや多くの日本人、いや多くの世界の人々はあれを美しいとか、格好良いとは思わないのではないか。格闘技には特に多いが、W杯の選手入場の際に「エスコートキッズ」(選手と一緒に手をつないで入場・子どもたちの夢を育む)は微笑ましく、同じくFIFA(国際サッカー連盟)が推奨する[FAIR PLAY]のフラッグ。この二つはヒットだと思っているが、キッズと手を繋ぐ選手の腕にペインティングはいただけない。感覚の違いといえばそれまでだが。スポーツのもつ爽やかさは台無し。JFA(日本サッカー協会)はFIFAに提言すべきではないか。予選リーグ敗退国としてはと思われがちだが、なに、あの日本人サポーターのゲームの後のゴミ拾いはどれだけサッカーの競技としてのグレードを高めたことか。そこに、ボディペインティングへの言及は日本ならではの金言だろう。

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