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第283回 セルジオ越後氏、アジア杯を斬る

1月20日、オーストラリアで開催中のアジア杯、日本代表はヨルダンに2対0で勝ち準々決勝に進出。1次リーグDグループを首位で突破した。D組はパレスチナ、イラク、ヨルダンのいずれも中東だったが、対ヨルダン戦を中心にセルジオ越後氏(日刊スポーツ評論家)の"鋭角ジャッジ"を紹介しよう。『日本は安定した試合運びで、ヨルダンのチャンスはほぼゼロだった。その中で香川が過去2戦に比べて、良い動きを見せていたのが印象に残った。得点以外にも良く動いてボールに触り、はたくなどプレーに絡めていた。香川はザックジャパンの時のようにサイドで1対1で体を張るような選手ではないので、今のインサイドハーフでパスをつなぐスタイルの方が、まだ合っているのだろう。ただ忘れちゃいけないのが、パレスチナ、イラク、ヨルダンは残念ながらブンデスリーガ(井・註~ドイツのプロサッカーリーグ。ドイツは2014のブラジルW杯で優勝)のレベルにはないということ。日本がちょっとパスを回せば、香川もフリーになって自分のプレーができる。それを錯覚して、世界に出てボコボコにされてきたのがこれまでの日本だ。準々決勝はUAE(アラブ首長国連邦)と戦うことが決まったが、そのあたりまではまだ勝って当たり前。アジア杯での本当の戦いはベスト4からだ。例えば先制された時、どう戦うのか。アギーレジャパンの真の力が試されるだろう』。

ブラジルW杯で低迷した香川真司選手の対ヨルダン戦の結果を、日ごろ辛口のセルジオ氏が認めたようだが、これは香川選手特定ではなく、他のすべての代表選手に向けた、ベスト4からの難しい試合へのエールと受け止めた。確かに今大会のオーストラリア、韓国、中国も本当に手強いと思う。余談だが、暮れから正月の間に日頃から読みたいと思っていた一冊「セルジオ越後の辛口の真実」~新著を読む。その他では今年は司馬遼太郎を再読したく、膨大な作品から「関ヶ原」の上・中・下を読んだ面白かった。

サッカー関係者は周知のことだが、例によってサッカー以外の方々へセルジオ氏の略歴を前著から紹介したい。セルジオ越後~サッカー解説者・ブラジル・サンパウロ生まれの日系2世(母親は天草出身)。1972(昭和47)年に来日し藤和不動産(現・湘南ベルマーレ)サッカー部で活躍。エラシコというフェイントの創始者と言われ魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。来日当時から少年サッカーの指導にも熱心で、1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」の認定指導員として全国各地で青少年のサッカー指導にあたる。現在までに千回以上の教室で延べ60万人以上の人々にサッカーの魅力を伝えてきた。

昨年末、日本バスケット協会が、国際連盟から国内に二つのリーグが存在する点の指摘を受けた。これは要約すると、チーム名に親会社の名前を冠する企業チームのリーグと、片やチーム名に地域名を冠するリーグの二つを調整出来なかった日本協会の統治能力を問われたもの。まさに、各競技団体が抱える今日的テーマ。ここいらに関してセルジオ氏は同著で「Jリーグも開幕から22年が経つ。いまでも開幕した1993年を思い返すことがある。当時チェアマンだった川淵三郎さんと、当時ヴェルディ川崎の親会社だった読売新聞グループの渡邊恒雄会長はいつも言い争っていた。チーム名から親会社を外すというJリーグの方針に渡邊会長が納得しなかった。スポーツに対する価値観の違いが両者の関係を悪化させていた。今も昔も日本のスポーツ界は企業によって支えられてきた。プロ野球界の読売ジャイアンツのように、豊富な資金力を持つ企業がチーム名に親会社の名前を入れるのが当たり前だった。これは野球に限ったことではなく、アイスホッケー、バスケ、バレー等にも当てはまる。サッカーも日本リーグ時代は、日産、ヤンマー、松下電器(現パナソニック)等、チーム名に親会社の名前が入っていた。しかし、こうした企業がスポーツチームを運営する仕組みには、親会社の意向や業績によってチームの運営が左右されてしまう大きな欠陥がある。だからこそバブル崩壊後に発足したJリーグは企業スポーツからの脱却を目指し、地域密着を謳い、企業、市民、自治体が一体となって運営して、仮に企業が倒産してもチームは生き残るスタイルを確立したが、一部のチームを除き運営は苦しいのが実情だが、日本のスポーツの在り方には方向性を示している」。

熊本との関わりも深く何度も少年の育成で指導を受けた。県協会の先駆者の遠山和美先生は『とにかくテクニックが凄い、それから辛辣ではあるがユーモアがあり皆を引き付ける、日本のサッカー界はドイツのクラマーさんから欧州スタイルを学び、セルジオさんの南米スタイルのサッカーに魅せられた』と語っていただいた。雑誌のNumberはかつて『ニッポンを叱り続けた男の人生』の特集をした。これからもサッカー界のご意見番として辛口のコメントを期待したい。

アジア杯ベスト8が出そろい、日本代表は23日にUAE、勝てば27日にオーストラリア対中国の勝者と相対する。20日に戦ったヨルダンのウイルキンス監督は『日本には、いいDF、いいMF、いいFWがいる。技術があり、うまれつき規律も備わっている』と脱帽したとの嬉しいコメント、頑張れニッポンだ。

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