第293回 スポーツと障害
4月15日、MLB(米大リーグ・プロ野球)の全チームの監督・選手全員が42番の揃いの背番号でプレーをした。お気づきの方も結構おられたと思う。これは黒人初のプレイヤーとして1947(昭和22)年にデビューして、その後、大活躍をして米国の野球ファンに愛された、ジャッキー・ロビンソン選手の偉業を称える小粋なイベントだった。ヤンキースの田中将大投手もマーリンズのイチロー外野手、ジャイアンツの青木宣親外野手も42番でプレーした。
それとは別に、日本の誇る投手の田中将大、ダルビッシュ・有、藤川球児、少し前では松坂大輔あたりが、軒並み肩や肘を痛め、手術やそれに近い処置で長期間現場を離脱している。一般に大リーグのボールは滑りやすいと言われる、日本人の手は欧米人に比べると小さく、ボールをしっかり持とうとすると肘にストレスが加わり、損傷を受けやすいそうだ。肘内側副靭帯の部分断裂あたりが主な病名だが、手術の道を選べば復帰には1年以上を要する。そんな中で光輝くのは1995年にドジャースに入団した野茂英雄投手、その年に新人王、最多奪三振に輝き、メジャー通算2度のノーヒット・ノーランを達成するなど、まさに先駆者としての偉大な選手。先に松井秀喜選手が国民栄誉賞を受けたが、これは本当は野茂選手が相応しく、野手ではイチロー選手もまだ早いと受賞を辞退、これは妥当な判断と評価したい。
話が横道にそれたが、米国では肩は消耗品と言われ、当然、投球回数や投球後のケアにも配慮がある。その観点から日本の投手は投げ込み過ぎ。最近では甲子園の高校野球でも休日を設けたり、延長10回を終えたら双方無死1・2塁から始める~タイブレーク制が検討されている。この導入にあたっては"もう名勝負は見られない"等の無責任な声があるが、生身の体を酷使させて、選手寿命が短くなることには無関心の輩の声は無視でよい。朝日新聞の3月17日~19日に"子どもとスポーツ・けがをなくそう"が特集された。紹介しよう~「成長期に起こりやすいスポーツのけがと言えば、「野球ひじ」が知られて久しい。投球動作は、ひじに屈伸以外の引っ張る力などが加わりやすい。野球ひじはそれを繰り返す中で、まだ柔らかい子どもの骨に負担がかかって起こる。そして中学・高校で投げ過ぎの結果、多くの有望な人たちが怪我で悩むことになる。」こんな記事を特集する朝日新聞も夏の甲子園の主催者で、県の予選からすでに煽っているのだから、何のことはない。
ただ、そんな中で日本のプロ野球界に超人もいた。金田正一(400勝)、米田哲也(350勝)、小山正明(220勝)、3人合わせると1070勝と言うのだから恐れ入る。神様・仏様・稲尾様と言われた稲尾和久投手は、年間42勝の大記録保持者だが、やはり無理が重なったのか短命だった。これらの方々は数少ない頑健派だが氷山の一角、あたら埋もれた選手たちの数は量り知れない。
サッカーも成長期に膝の故障は少なくない。オスグッド・シュラッター(人名)病や、中・高生あたりに多いのが、「離断性骨軟骨炎」、強いキックや急な方向転換を繰り返す負荷で関節の表面から軟骨のかけらがはがれ落ちてしまう。「野球ひじ」と同様で初期では自覚症状はなく、中期になって痛み出す。いずれも初発の段階から掌握して確かな治療をすれば90%は回復可能であり、本人の自己申告もさることながらコーチや保護者が早期発見で見抜いてあげることが肝心。日頃からの健康チェックとお互いの信頼関係に加えて、練習項目の工夫がそれらの予防になる知識を、指導者は身につけて欲しい。マンネリ化した練習には子どものモチベーションも低く、素材は余り変わりはなくても、見た目や味付けで料理が変わる様に、指導者は絶えずフレッシュな気持ちで取り組める練習メニューを心がけてもらいたいものだ。
心の病も発生した。埼玉県の本庄第一高校サッカー部が、親善試合で訪問した韓国で集団万引き。その後の学校の対応も判然としない。万引きを行ったのが全員3年生なので、「2年生以下は関係ない」のコメントもあるようだが、ことは国辱的不祥事だ、迅速に納得のいく方向性を求めたいものだ。近燐の国との親善ゲームあたりでの交流がますます増える傾向にある昨今、最低のマナーは身につけてもらいたい。この際だからもう一つ、かつての日本代表の「前園真聖」選手がテレビのバラエティー番組ではじけているが、ちょっと首を傾げざるを得ない言動が多いし、申し訳ないがクイズ番組での基礎学力のなさの露呈などは恥ずかしい。放置しておいて良いものか一考を要することではないか。局側にあれをキャラと捉えておられるのなら、それは可愛そうなこと。