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第287回 懐古~ベルギー

ベルギーはヨーロッパ北西部の王国。東はオランダ、ドイツ、南西はルクセンブルグやフランスと国境を接し、北は北海を隔ててイギリスと相対する。人口は1千万前後で周辺の列強国に囲まれる感じの小国。言葉はそれぞれに接する国々の言葉の影響を受けている。小さな国だがヨーロッパ有数の工業国で豊富な石炭地帯をベースに鉄公鋼・科学・ガラス・金属加工に優れ、特にダイヤの研磨技術は世界的に有名。第2次世界大戦では、ほとんど抵抗せずにドイツ軍に降伏したため、国土及び産業は荒廃せずに残った。(多くの近隣国が戦火で焦土と化した戦争の中で、珍しい立位置だが、不評の声も高かったようだ)。首都ブリュッセルには中世の香り漂う建物に囲まれた"グラン・プラス"の名称の広場がある。中世紀にフランスからの攻撃を受け、広場の木造建築が焼け落ちたが、その後、17世紀に完成した石造りの重厚で繊細な建物には、市庁舎、裁判所、美術館、サンミッシェル大聖堂、証券取引所辺りが立ち並ぶ。この広場は世界遺産に登録されている。

オランダ、ドイツ、フランスを訪れる日本人は多いが、その隣国のベルギーを訪れる日本人は不思議と少ない。ある意味では観光客の手垢の付いていない気品のある国。日本の皇室とは深いご縁があり昨年(2014年)の12月にはファビオラ元国王妃のご葬儀に、美智子妃殿下が単身で弔問に訪れたのは記憶に新しい。私はベルギーを2度訪れた。一度宿泊したブリュッセルのホテルでチェックインを済ませて振り向くと、そこに鉄製の籠があり何と現存する世界で一番古いエレベーターとのこと。壁面はなく鉄格子のままで上階に昇っていく、非日常の体験は楽しかった。またビールはドイツやチェコが有名だが、ベルギービールは格別ののど越し、ラベルが修道院の絵柄の変わったものだったが、素晴らしく美味しかった。もう一つチョコレートも有名。量りでも売ってくれるので吟味出来て便利。グラン・プラスの広場の一角には世界的ブランドの「ゴディバ」の店もある。

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2002年の日韓ワールドカップ(以下WC)の際に、熊本はベルギー代表(赤い悪魔~代表チームの呼称)をキャンプに招いた。来日メンバーはローベル・ワセイジュ監督、役員、選手23名の総勢43名。期間は5月23日から6月18日までの27日間。熊本招致委員会は潮谷義子熊本県知事(当時)、三角保之熊本市長(当時)を長として、議会、行政、県サッカー協会等で構成された。ただ13年を経て当時の資料を当協会の河野等副会長から見せていただいて思うのは、熊本招致が決定したあと、WC本番の組み合わせ抽選で、日本代表の初戦の対戦相手がなんとベルギーに決まったこと。熊本サイドの緊張は想像に難くない。それでも期間中に2回の親善試合を行い5月26日の対コスタリカ戦(1対0でベルギー勝利)は県民総合運動公園陸上競技場・現「うまかな・よかなスタジアム」で2万人の観客が一足早くWC本番の雰囲気を満喫したと報じられている。滞在中には歓迎レセプションや小中学生サッカー教室などの交流事業にも快く応じ、練習の余暇には阿蘇中岳火口見物や地獄温泉での入湯、デパートでのショッピング等、国際親善も果たし熊本での滞在を楽しんで貰った。そして6月4日の埼玉スタジアムでのWCグループリーグH、日本対ベルギーは2対2の双方勝ち点1のドローで終わった。WC直後の8月に石川・大分・熊本の中学生チームがベルギーを訪問。チームに随行した当協会の満田和浩事業委員長(現常務理事)が知事、市長の親書をベルギー協会に持参した。

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チョコレートと言えば2月14日の「バレンタインデー」が連想されるが、これは日本独自のもので世界的風習ではない。本来、キリスト教の守護聖人セント・バレンタインを祝う日のこと。欧米で若い男性が自分が好意を寄せる女性に手紙を出す風習を逆手にとって、日本のチョコレート業界のキャンペーンで女性から男性にプレゼントするアイディア。これが見事にヒットした次第。この際、現代の日本のそれらの商魂に乗せられた企画を列記してみたい。12月24日の「イブ」と25日の「クリスマス」は、本来、キリストの生誕を祝う静かでアットホームなものだが、戦後の景気が上向いた時代には繁華街での乱痴気(らんちき~理性を失くす)騒ぎも多く、巷は喧騒そのものだった。これもケーキ業界は大いに潤った。近年の落ち着いた雰囲気でのクリスマスは好ましい。ワインの新酒のボージョレヌーボを大騒ぎするのも日本だけ。節分に、ある方向を向いて巻ずしを食べる「恵方巻」は1989年に広島のセブンイレブンが始めた仕掛け。今年の当日のテレビで若い女性に何を念じて食べましたかと聞くと『減量したい』と、結構小太りの人の答えで笑ってしまった。最後に異常としか映らないのが10月29日の「ハロウィン」。これはケルト人(古代に欧州の中西部に生息した人類)の収穫祭を祝う仮装フェスティバル。その仮装という点に着眼した業者の煽りか、乗せられた若者が渋谷あたりでの馬鹿騒ぎ。平和なのか安易なのか何事にも乗り易い国民性であるのは間違いない。本題の「懐古~ベルギー」のチョコレートから最後は大きく外れたが、これは日頃からの持論を述べさせていただいた。

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